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1年作ったゲームの開発中止を決めた話

こんにちは!丸ダイスです!

約1年前くらいから本格的に始めた「地球人の島」の開発を中止することを決めたので、そのお知らせです!

残念な結果ですが、かけた時間を今後の開発に活かすためにも開発の振り返りをしたいと思います。

ゲームの内容などを知らなくても読めるように書くので、ゲームを作る方の参考になれば幸いです!

※ゲームの内容は前提とはしませんが、誰でも読める易しい記事ではありません。 ゲーム開発の経験があると読みやすく、特に開発記録は正確に読むために熟読を必要とします。

開発記録

2019年2月 ゲームジャム版:オンラインわちゃわちゃに感じた手応え

「地球人の島」の開発はここから始まりました。

当時開催されたゲームジャム「unity1week」のお題は「つながる」。

この時一週間で作ったプロトタイプがこちら。

このバージョンはunityroomでプレイ出来ます:

つなげて!道路 オンライン | フリーゲーム投稿サイト unityroom

『道をつなげて・街をつなげて・ほかのプレイヤーともつながる!』というアオリ文句で、

「パズル的な道をつなげる気持ちよさ」と「オンラインのわちゃわちゃ協力プレイ」を楽しめる作品です。

「10人という大規模で共闘が楽しめる」「基本アクションの手応えが良い」これが揃うだけでも、 ゲームジャムレベルでは十分な品質を感じられたのだと思います。

ポジティブな評価を頂き、オンラインプレイに手応えを感じました。

ただし、このプロトタイプには大きな弱点が存在します……。

私はその弱点を自覚していましたが、今思えば最後まで解決が出来ていない致命的な弱点だったのかもしれません…

2019年8月 夏コミ版:短期で開発するクリッカーにするつもりが…

プロトタイプの弱点、それは「ゴールがないこと」です。

便宜的に制限時間とスコアを計算していましたが、あくまでおまけ。

今どきスコアが表示されるだけで何度も遊んでくれるプレイヤーはいないので、

楽しさの本質である「共闘」と「道がつながる」が重要になるゴールが必要でした。

5月に「これなら短期開発でいけるんじゃね?」と思いついて本格開発を開始。夏コミで発表したのがこちら

youtu.be

(ノーカット版はこちら

この時のゴールは「街から街の移民で人口を増やす」です。

  • 「街」はパネル自体が持つのではなく、予め設置されたハタから出現
  • パネルに「人種」が関連付き、街と街をつなぐ「街道」にそって人が「移民」

街道の長さや通ったパネルの人種で人口比率が変わるので、狙った人口比率を達成してもらおう、という遊びです。

「こうしようかな?こうつなげようかな?」と考えて道をつなげる競技性が生まれました。これは狙い通り。

悪かった点としては、見た目はイマイチでした。道を置く前から色がつくのはカラフルできれいかと思いきや、 「自分で土地を広げてる感」が大幅に削がれることに作ってから気が付きました。

また、人口という街をクリックしないと見られない数字だけでは、パッと見た時に発展させてる感触が弱かったです。

その他、共闘的な要素が一旦消えたことで元々あったわちゃわちゃ感はなくなりました。

おそらくこれのせいで頂いたネガティブな感想もあり動揺したこともありましたが、 開拓・クラフト型のゲームはマルチプレイ化がバランスを崩しにくいので、今思えばそこは気にする本質ではなかったと思います。

2019年11月 冬コミ版:見た目を重視した開拓ゲーを目指す

単なる数字としての人口を増やすゴール設定は分が悪そうだったので大幅に変更し、 いわゆる都市開拓ゲームの競技性を目指すことにしました。

Civilizationの開拓パートや、未プレイですがSimCityなどを参考に

『「土地を広げる」「建築を増やす」「人口を増やす」といった各要素の増産が相互に別の要素の増産を産む』という拡大再生産のサイクルを 競技性の中心に据えました。

また、不要になった土地の色を取っ払うことと合わせて「地球人と一緒に島を開拓」という世界観をはっきりさせました。

そうして出来た冬コミ版がこちら

youtu.be

(ノーカット版はこちら

建築方法が街から街を歩く「地球人」の力を借りる形に変わったことで、数字ではなく見えているにぎやかさがそのまま開拓の 進行具合になっています。

また、お金というリソースが追加され、人口や建築の数によってもらえるかずが増えるので、人口→建築→お金→土地… と、複数の要素がサイクルする拡大再生産が 出来始めています。

この段階で良かったのは「島」というモチーフを採用した点でした。「地球人の島」というタイトルも決まり 「パット見て『面白そう』」というプロモーション上の強さに手応えが出来ました。

反対にイマイチだったのは競技性です。

複数の要素が相互に支え合う拡大再生産を目指していたものの、お金以外に拾えるアイテムは用途がないまま、 地球人が中々建築に来なくてイライラ、モニュメントは建築要件が同じで繰り返す遊ぶ意味がない、といった具合です。

(少し前のデジゲー博版はこれとほぼ同じなので省略)。

2020年4月 迷走中:モニタープレイ駆動の試作サイクルに光明

競技性の中心は感触が良かったため、拡大再生産をより楽しめる要素をスクラップ&ビルドをしていましたが、中々よい手応えがない・・・。

迷走している間に気付いたのが、モニタープレイしないまま潰している仕様があることでした。

「建築の種類ごとに変わるお金以外の拾うアイテム」を作ったのは冬コミ版の時点だったのですが、

それの用途を固める前に「建築の種類ごとに変わる島全体の発展度(非消費。拾わなくて良い)」という仕様を思いつき、 「お金以外の拾うアイテム」の実装が試す前に無駄になってしまいました。

詳細は省きますがこの他にも、思いついて実装も始めたものの、別の思いつきでモニターしないまま潰してしまった仕様があることに気づきます。

リソース管理型のゲームはバランスが調整されて各要素が相互に機能して始めて楽しさが生まれるので、新しい要素は実装してもすぐに面白くはなりません。

そこに気づかないまま新しい要素を実装するやすぐプレイして(イマイチだな…)なんてやっていたので、良い手応えがないのは当然でした。

単純に実装コストがもったいないですし、作った→つまらん… を繰り返すのでモチベが下がります。

これに対する解答として「モニタープレイ駆動の試作サイクル」に切り替えることにしました。

やり方は、『検証する遊びが初プレイでも体験出来る要件をまとめてタスク化して、全てこなしてからモニタープレイを行う』というものです。

要は「作りきるまで遊ぶな」ということです。こうしてみるとただのPDCAですが、私のようなゲームデザイン大好き開発者には重要なのではと思います。

GitHub Projectを使い、必要な(だが出来てない)要件を全て並べました。

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今はDoneばかりですが、4月時点では全部To doでした。

モニタープレイで検証する内容が具体的に分かるタイトルも効果が高そうです。

2020年7月 最終版:サイクルは整えたものの中止判断

7月ごろにはこのProjectを消化しきり、テストプレイを行いました。

youtu.be

(ノーカット版はこちら

これを自分で5回くらい遊んで評価した結果、

『基本を変えずに完成を目指せる遊びの核が出来ていない』と判断して、開発中止を決めました!

学び

学び1. なぜゲームジャムやコミケに出ると開発が進むのか?

途中で「モニタープレイ駆動の試作サイクル」を紹介しましたが、 実はこの方法、多くの開発者が知らずに実践しています。「ゲームジャム」や「コミケ」です。

外向きの発表では初見で体験出来ることが必須なので、自然とモニタープレイ可能な要件が整理され、優先されます。

外部から迫られる締め切りが理由としてよく上げられますが、このように「強制的に初見で遊べる仕様に整理される」 ことも重要に働いていそうです。

個人的にはこれが大きな学びで、4月以降は1月~4月の迷走に比べて最終版に活かせた開発成果が目に見えて多く、手戻りも少なかったです。

うまく機能すればコロナ禍で減った外向き発表に頼らない高い開発効率が期待出来そうなので、今後も活用するつもりです。

学び2. いつ諦めるか?どうやって諦めるか?

今回は、泥沼ゲーム開発パターンとして知られる、「作っては壊すが永遠に繰り返される」 になってしまったと思います。

「これをゲームにしたら面白そう」というボトムアップなアイデアから試作を始めた場合に難しいのが「どこで諦めるか?」です。

これには長年悩んでいたのですが、先日素晴らしい考え方を知ったので共有させて下さい。

『1日作ってダメなら諦める。良くなる可能性があっても今の自分には無理だったと考える』

unity1weekなどで活躍されているゲーム開発者のtnkさんに頂いたアドバイスです(原文ままではないです)

1週間ゲームジャムの文脈で話されていたので、言葉通りに適用出来ないケースもあると思いますが、 特に重要なのは「プロデューサーの目線を持つこと」だと自分なりに解釈しました。

自分がもし、企画を持ってきて開発を依頼したプロデューサーだったらどうでしょうか?

まず「この日に遊べるものを」と期限は決めるでしょうし、「作り直したら良くなるかも」とクリエイターが言っても、 現に面白いものを用意出来なかった事実を根拠に、その人自身の能力を含めて企画を見直すのがプロデューサーの役目です。

一見厳しいですが、ほかの企画なら輝けるかもしれないクリエイターに寄り添った人事とも言えます。 大切なパートナーであるクリエイターを腐らせていてはもったいない!

幸いプロデューサーも私なので、人格ごと見限られることはないのです(よかった!)。

正しかったかどうかは分かりませんが、中止を決断出来たのはこの考え方のおかげです。

学び1. 企画書は必ず言語化しよう!

ゲーム開発が泥沼化するパターンは

  • 思いついた要素が永遠と継ぎ足されていく
  • 作っては壊すが永遠に繰り返される

のどちらかになることが多いです(今回は後者)。 完成しないのはどちらも同じで、「企画が明確でない(=ゲームの核は何なのか?)」が原因です。

何が重要で何がどうでもいいのか不明確なので思いついたものがアレもコレもと継ぎ足されてしまうし、 駆け引きやゲーム体験(≒競技性)が不明確なまま要素から作り始めるからメカニクスをころころと変えてしまう。

昨年11月のゲームジャムに参加した時に企画を言語化するパワーを知ってからはそうしてますが、 それより前に始めた開発だったので曖昧なまま進んだのはよくなかったです。

『アイデア』と『企画』をフォーマット化する方法論とそのメリットについては前々回のゲームジャムの振り返りに書いたので、よければご覧ください。

モニタープレイ歓迎します!

「地球人の島」のプレイアブルなビルドは全部で4つあります

ゲームジャム版以外は現在入手不可能ですが、知人や希望される方にはぜひ遊んで頂きたいです。

連絡頂ければ無料でビルドをお渡しします(ただし、プレイ後に感想をお聞きすると思います・・)

今後の開発について

ナイショです!げへへ!!

めっちゃ面白いゲーム作ります!